やせたい、やせたいと思っているうちに日々流されていく。ジャンクフードだとしても「好きなものを食べられない人生なんて、ごめんだ」と居直る人もいそうだ。それに毎日忙しい中、細かい食事メニューになるダイエット作戦なんて付き合ってもいられない。それだけにシンプルさが必要だが、断食なら、要は食べなければいい。金もかからない。
助言を仰いだのは、東京・東中野「渡辺医院」の渡辺正(しょう)院長(81)。日々の生活でも朝食をとらない「西式健康法」に基づいた指導には定評がある。
今回のやり方は、金曜日の夕食後から日曜日正午まで食べないというもの。サラリーマンが実行しやすい週末プチ断食だ。途中、生水(ミネラルウォーターも可)と市販の野菜ジュースは2リットルを上限に、適度に飲むのは許される。
スタートから翌日正午までの15時間はすんなりクリア。「やらねばならぬ」との気持の張りもあった
日中は水をチビリチビリ飲みながら過ごしていく。しかし夕方から急激に空腹感に襲われた。空腹のピークはスタートから約24時間後の土曜夜9時。「腹が減った」「苦しい」という気持は高まるばかり。気分転換に、レストランやコンビニの前は努めて避けながら、夜の街をうろうろ散歩。床に就いたのが深夜零時だった。
目的達成したら もうやみつき
そして日曜朝、起き抜けが妙に爽やかだ。空腹感も少ない。この感覚、起床後2、3時間経っても変わらない。だが今回は予定通り、正午に終了。トータル39時間の初体験だった。苦しさを通り越した際の爽やかさ感には理由があった。
苦しさ越えて… 断食ハイも体験
○…断食による爽快感のもう一つの要因は「断食ハイ」だった。マラソンランナーは苦しい時間を耐えているうちに、それを緩和する快感ホルモンが脳から出て「ランナーズ・ハイ」となるが、断食でも、耐え忍ぶうちに、快感物質エンドルフィンが分泌される。これも気持ちよさにつながっているという。
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空腹感とは腹が空っぽになったから感じるのではない。血液中のブドウ糖が足りなくなったことを脳に伝えているからだという。実質的に食べ物による栄養補給がなくなってくると、人間のからだは体脂肪を燃焼させるようになる。つまり無駄肉=脂肪分が減っていく。「この変化。体質が改善されたっていう感覚が、体を貫く。それが爽快感となるんです」と渡辺院長。
第1回断食をきっかけに、月2回の週末断食を続け、1年間で10kg減の例もある、40時間足らずでも、自分の心を律し、目的を達成した充実感がやみつきになるのだという。
あすは週末金曜日。早速、実行できるチャンスがやってきた。
渡辺院長の話
極端な話かもしれませんが、人は何日か食べなくても大丈夫なのです。山や海で遭難した人が、水とほんの少しの食糧だけで何日も過ごし生還した例もありますが、これこそ餓えに対応するメカニズム、人間の生理機能は何十万年の歴史の中、生き延びるようにつくられているんです。逆に飽食は短い歴史しかないから対応できず、病気が起こりやすい。日本だって朝食を取るようになったのは江戸・元禄時代(1700年代)から。また朝食をやめたら生水を飲むこと。朝起きたら必ずコップ1杯半を飲んでください。沸騰したお湯は酸素が欠乏し、カルシウムそのほかの無機質も減少します。生水が有効です。カルキくさかったら浄水器を使えばいい。生の野菜が体にいいのと同じです。